ゲームを作ったので、その振り返りです。
こちらのゲームを作りました。
『天命ダイスバトル』を公開しました。
— がむしゃら (@GMshara_) April 11, 2021
ダイスの目が全てを決めるターン制バトルゲームです。
すごろく式のマップ移動もあるよ!
↓↓ブラウザで無料で遊べます↓↓https://t.co/IqPzu8ztH2 pic.twitter.com/5FNpiU1ZWA
ダイスの目が全てを決めるターン制バトルゲームです。
プレイヤーは知力と運を駆使して100マス目の果てを目指します。
このゲームを遊んでいないのにこの記事を読む人はいないと思いますが、念のため言っておきます。遊んでね!!!この記事にはネタバレを大いに含むし、そもそもプレイしたのを前提に書く部分がほとんどだと思います。
ところで、実は反省会自体は既に行っていました。
こちらの記事で、主要な反省ポイントを挙げています。
さらに、記事冒頭でこんなことも書いています。
ゲームの設計についてはそこまで語りません。需要が無いですしね。
どうやって作ったかなんて僕だけが知っていればいいんダ!
というわけで、ゲームの設計については書かないつもりでした。
しかし「僕だけが知っていればいい」は書かない理由の一つに過ぎないことに気付きました。少し思い直して、やはり書く理由のほうが多かったです。
- ①自分語り気持ち良い
- ②自身の歩みを記録しておく
- ③単純にこういう文章を書くのが好き
自分が作ったゲームについて「どういう意図で作ったか」「どう作ったか」を書くのは、自分語りのようなものです。元来、自分語りというのは気持ち良いものです。自作ゲームについて語るのは、ゲームを完成させた後にしか出来ないことですし、やはりやっておいたほうが自分にとって良いと判断しました。
また、自身の歩みを記録しておくことで、後からどういうことをしていたのか振り返る資料として役立ちます。特に、ゲームの設計についての振り返りをより詳細に行えば、次のゲーム制作へのヒントにもなるでしょう。
こうした振り返り作業は、自身の成果物に対してラベルを貼って分類するような行いです。こういうの、結構好きなんですよね。
というわけで、この記事を書くことにしました。
なお、主なトピックはゲームの設計の話であり、
アート/サウンド/プログラミングなどの話はほとんどありません。
テーマ
このゲームを作る前に、一つ作ったゲームがありました。
『逆襲ブタバトル』という運要素ゼロのターン制バトルゲームです。
『逆襲ブタバトル』で使わなかった運要素を使ったゲームを作ろう!というのが最初の出発点です。また、進行要素を入れようと考えたのも『逆襲ブタバトル』では出来なかったからです。よってテーマは
- ①運要素をふんだんに用いる
- ②進行要素を入れる
でした。さらにこれらに加えて、
- ③ドラマ
- ④世界観・お話を入れる
- ⑤ジレンマ
などもありました。
③ドラマ
ランダム要素を含むゲームなら、毎プレイで違うゲーム展開が楽しめるものに出来るかもしれないと考えていました。プレイ毎に違うゲーム展開(ドラマ)が楽しめるのではないかと。しかし結果として毎プレイでゲーム展開に大きな変化をもたらすことが出来なかったので、このテーマを達成できたかどうかは怪しいところです。
これは今後のゲーム制作においてもしばらくテーマになってきそうです。「感情変化の流れを生み出せるものか?」「人に話したくなるような展開が生まれるか?」といったポイントですね。ゲームをドラマ発生装置にしてみたい。
④世界観・お話
未だに世界観やお話を入れたことが無かったので、そろそろ一度くらいは挑戦してみたかった。決まったドラマをプレイヤーに体験してもらうことが出来ますからね。
⑤ジレンマ
ゲームの面白さとしてよく取り上げられる要素なので、意識しておきたかったものです。
基本システム
テーマのところで語りましたが、運要素ゼロの前作と対比して今度は運要素をふんだんに用いたターン制バトルゲームを作ろう!という動機がありました。
また、それと平行して『さいころクエスト』への関心も強いものがありました。
新作ゲーム『SAIKORO QUEST(さいころクエスト)』を公開しました。
— ニカイドウレンジ (@R_Nikaido) December 15, 2019
・敵と戦うだけのRPG
・各ターンの攻撃力と回復力はダイスで決める
・敵の強さや報酬もダイスで決める
・敵と報酬を天秤にかけ戦うかどうか判断する、歯ごたえあるゲーム
・無料
今すぐプレイ!
→ https://t.co/8hCcMJWePw pic.twitter.com/I7gKUtIowK
(作者ご本人のツイートのほうがゲーム内容が分かりやすいのでツイートを使わせていただきました)
がむしゃら三大ゲームデザイン師匠の一人*1、ニカイドウレンジさん作のノンフィールドRPGです。ダイス的ゲームシステムを上手く用いています。
「やはり運要素となるとダイスだろう」となるのはもはや必然でした。
というわけで、ダイスを用いるターン制バトルゲームになることは確定します。
つづいて、極端に思考を振り切ってみます。
ダイスの運要素のみで構成されるターン制バトルゲームについて考えてみました。
- ①お互いにダイスを振って目を出す
- ②出た目で攻撃を仕掛ける
- ③お互いが死ぬまで①②を繰り返す
以上です。わーなんておもしろそうなげーむなんだー…ナンダー……ナンダー………
運要素を用いるといっても、完全に運のみでゲームの勝敗が決まる運ゲーにするつもりは全くありませんでした。この運ゲーを打破する仕組みが必要です。
そこで思い付いたのが、
- ①「運が悪いときにリソースが蓄積される」
- ②「リソースを使って運をコントロールする」
という仕組みでした。
この考えに基づいて作った『天命ダイスバトル』のバトルは以下の流れです。
- ①ダイスの目で攻撃する
- ②ダメージでMPが回復する
- ③MPを消費してダイスの目およびダイスの数を制御する
上記システムによって、以下のようなことが発生します
- 運が悪くダメージを受けても、MPが溜まって後から運を制御出来る
- 運を制御してるとMPが尽きてくるので、後から運が試される
- あえてダメージを受けてMPを回復するか?
- MPを使って一気に敵を倒しきるか?(しかしMPを使い切ると…
ゲーム展開に良い循環が生まれます。実際に1日でプロトタイプ版を制作し、何人かの方に遊んでいただいて、この仕組みが機能することを確認しました。したがって、この仕組みを軸に進めていけば、一定の面白さは確保できると考え、本開発に取り組み始めました。
コンセプト
コンセプトの話をする前に、まず参考にした記事を紹介します。
がむしゃら三大ゲームデザイン師匠の一人*2、だらねこさんが執筆した記事です。同氏は他にもゲーム制作において大変参考になる記事を大量に書いておられます。
こちらの記事を参考に、メインコンセプトとサブコンセプトを立てました。
なお、前述したテーマもこちらの記事を参考にして考えたものです。
このゲームの制作では、記事中で語られている
「ゲームシステムからコンセプトを逆算する」手法が中心になりました。
以下のコンセプトは前述した基本システムを元に構築したものです。
『天命ダイスバトル』のメインコンセプトは
「ダイスを振って、一喜一憂するゲーム」です。
サブコンセプトとして「運を制御して、コントロール感を得る楽しさ」と
「運に身を委ねて、喜びと絶望を味わう面白さを追求する」を設定しました。
さらにこれらに加え、キーフレーズ分解+それらの重み付けを行いました。
キーフレーズ分解+それらの重み付けについては、こちらの記事参照です。
キーフレーズ分解+それらの重み付けは以下のとおりにしました。
①運を制御して、コントロール感を得る楽しさがある「よし」(30)
②運に身を委ねて、喜びと絶望が味わえる「出ろっ!!!出るなっ!!」(30)
③ドラマを生み出す「今回はこんなことがあった!」(20)
④悩ましさ・ジレンマを生み出す「どうするか悩む~…!」(10)
⑤リソースを蓄える気持ちよさ・強くなった感がある,貯蓄「強くなったな~!」(10)
キーフレーズ分解+それらの重み付けに関しては、上手く使えたかどうか分かりませんでした。やはりなにぶん初めてやることなので勝手が分からず、正しくキーフレーズ分解出来ているのかどうかが怪しいです。そんな調子なので、重み付けについても同様で、点数配分があってるのかどうか怪しいものです。特に僕は自分に甘い人間なので、自分が考えたネタを評価する際に甘い点数を付けがちになってしまうような気がしました。
と、最初から不安な気持ちで運用し始めているので、ゲーム制作に役立ったかどうかは微妙なところでした。
なお、上記コンセプト群を元に、最終的な実際の目的地として設定したのが、
【ラスボス相手に「○以上の目が出たら勝ち、出なかったら負け」状況に至る】
でした。
マップシステム
採用理由と反省点
マップシステムについて書きます。と、言ってもただのすごろくですね。すごろく式のマップ移動を採用した意図は、コンセプトに沿っているシステムだと思ったからです。「止まりたいマス」「止まりたくないマス」を用意することで、必然的に運を制御しようとしますし、特定の目が出ることを祈ります。振り直すべきかどうか?という悩ましい状況にもプレイヤーを連れて行けそうでした。また、各マスを辿っていく進行はプレイヤーのドラマにつながると考えていました。
反省点は、僕がそもそもすごろくシステムについて詳しく無かったことです。すごろくとはなにか?どんなすごろくが面白い/面白くないのか?これらについて全く理解していないまま、「コンセプト満たせそう!」と安易に飛びついてしまった気がします。
このゲームを完成させたいまでもすごろくについてなんにも分からずじまいです。なんとなく感じているのは、すごろくはマスのコンテンツが充実していないと面白さを発揮するのが難しいのでは?というものです。ようは物量が必要なシステム。別れ道とかあったほうがもっと面白いと思うんですよ。
すごろく、個人制作で使うシステムとしては向いてないかも…
マップのマス配置設計
まず、全体100マスなのは何故か?これは最初にとりあえず決めた数でした。しかしこれが意外にもテンポ,尺感として悪くない印象だったので確定させました。一度20刻み4区間の全80マスも試してみましたが、急すぎる気がしてすぐにやめました。
次に25マス1区間なのは何故か?これまたわりと適当に4区間に区切りました。コイツ何も考えてねえ。しかしこの25マスもまた「起承転結」を作るのにほどよい長さでした。序盤は敵マスがメインで進み、中盤から徐々にトゲマスなどを増やし、終盤で強い敵、そこを乗り越えてのご褒美として強化マス、という流れですね。
そのほか、トゲマスの間に強化マスを入れて強化マスを踏めたときに「よし!」という感覚を強めるように狙ったり、手前の強化マスを踏もうとして欲張ってその後方にあるトゲを踏んでしまうように狙ったりしました。
開幕や覚醒マスから6マス目にパワーアップマスを置いているのは、こちらの記事がきっかけでした。
こちらの記事の解説によると、すごろくで止まる確率が一番高いマスは6マス目(36%)だそうです。ゲームの最初に良いことが起きればプレイヤーが興味を持って続けてくれるのではないかと考えて配置しました。あとリトライ時のモチベ担保。
そのほか、全体的に同じ風景が続かないようにすることを意識しました。
ただ、やはり厳しめのバランスなので50マス辺りで全回復マス3連配置などして思いっきり緩めるところ作れば良かったかなあと思います。
敵の設計
敵の作り方
敵の設計について書きます。まず参考にしたのがこちらの記事でした。
がむしゃら三大ゲームデザイン師匠の一人*3、Clamさんによる敵キャラクターの作り方を解説した記事です。ご本人も記事でおっしゃられているとおり、思考の叩き台として活用させていただき、大いに役立ちました。
この記事を読んで「キラービー」と「アーマー」がすぐに生まれました。
・キラービー
特性は「同じ目のダイスで攻撃すると即死」です。目をコントロールするためのMP維持と、受ける攻撃を上手くコントロールすることが求められます。即死の緊張感はすさまじいものがありますね。
・アーマー
この敵は設計初期では、名称が「アクロバット」で、
- 「特定の目以外でダメージを受けない」
- 「ダメージを1にする」
- 「1~3程度の体力しかない」
まとめると「ほとんどの攻撃を回避するが当たると死ぬ」でした。
が、この仕組みで少し難点が発生しました。
- 出会い頭に特定の目が出て瞬殺してしまう
- 運が良ければ瞬殺、だと傾きが強すぎる
- 当ててもなんか気持ち良くない
などです。これらを解決するために
- 特定の目以外の攻撃は全部1ダメージ
- 特定の目を当てたら回避が崩れて全攻撃がダメージ二倍
として瞬殺問題と気持ち良くない問題を少し解消しました。
また、それにしたがって表現方法を「鎧が壊れる」にした結果、名称がアーマーに変更になりました。某アクションゲーム主人公をモチーフにしたので、アーマーのイントネーションが一般のそれとは少し違ったりします。
敵設計において、次に参考にしたのが『Slay the Spire』の敵です。特にシティ(2層)の敵ですね。参考にして作っていく過程で気付いたことが3つありました。題して、
【戦術性を重視するターン制バトルの敵設計において抑えておくと良さそうなこと】
(長いな)
これ抑えておくと良さそうだなーと思ったのが、
- ①独自の「勝ちパターン」を持っている*4
- ②弱点/強みの副作用を持っている
- ③HPを0にする以外に進捗を感じる要素を持っている
の3点です。ここから先の話は素人の私的意見を多く含むので、注意して下さい。
解説にあたって『Slay the Spire』のシティ(2層)に出てくる
「スフィアガーディアン」(ガード積んでくる球体の敵)を例に挙げます。
まず基本ステータスから見ていきます。
戦闘時の初期ステータスがこうなっています。そして行動パターンが
- 1ターン目:25ブロック
- 2ターン目:10ダメージ+脆弱化5
- 以後、10ダメージ×2→10ダメージ+15ブロックを繰り返す
となっています。厄介な敵だ!
ではまず「①独自の「勝ちパターン」を持っている」から考えます。まあこれは分かりやすいですよね。こいつの勝ちパターン、それは
- ブロックを高めて攻撃を防ぎ、脆弱化からの攻撃ですり潰す
です。あらゆるステータスと行動がこの勝ちパターンを遂行しようとしていますね。
では次に「②弱点/強みの副作用を持っている」を考えましょう。無敵に思える敵も、視点を変えれば弱点に満ちていることに気付きます。
などなどがあります。他にもいっぱいあると思います。ちゃんと観察すれば攻略法に満ちていますね。最高です。「強みの副作用」に関してはこの敵は少し薄いですね。後ほど別の敵を例に挙げましょう。
最後に「③HPを0にする以外に進捗を感じる要素を持っている」を見てみます。スフィアガーディアンにおける進捗を感じる要素、それはブロック値です。HPにダメージを与えるにはブロック値を0にしなければならないため、「敵を倒す」目的達成の過程が「ブロックを削る→HPを削る」となるわけです。このブロック値を削りきったときに「敵を倒す」目的に大きく近づいた感覚が生じます。「よし!倒せるぞ!」という感覚ですね。
この要素は言い換えれば、「小目標」と言えそうです。「敵を倒す(HPを0にする)」という大目標があり、その前に小目標が存在するわけですね。こうした小目標的な要素、少し探せば他のゲームでも見つかりました。例えば『オクトパストラベラー』 のブレイクや『DIMENSION REIGN』のHPブレイクが挙げられますね。どっちもブレイクだ。
最後にもうちょい補足。「強みの副作用」について。
これも『Slay the Spire』のビャード(飛んでるトカゲみたいな敵)が良い例になります。ビャードの強みは筋力を上げてからの5回攻撃です。が、この5回攻撃、強力な一方でカウンター系の効果にめっぽう弱いのです。これが強みの副作用ですね。また、ビャードは1ターンに3回アタックを喰らうと地に落ちて弱体化します。これは弱点とHP以外の進捗要素ですね。
長々と語りましたが、『天命ダイスバトル』の敵設計の話に戻ります。
上記踏まえて作ったのが「かしこいトリ」や「ゴースト」などですね。
残りの敵をざっと振り返ってみます。
・かしこいトリ
3つ目で記憶全部忘れるシステムが「HP以外の進捗」に該当します。ここまで書いてて思いましたが、記憶忘れる瞬間にダメージ二倍とか入れたら良かったなと思いました。やらかしてるじゃねーーか!!ゲーム開発こんなんばっか;;
・ゴースト
プレイヤーの強みは「MPを使ってダイスをコントロールする」です。ゴーストはその強みの元であるMPを削り切った後、二倍ダメージですり潰しに来ます。 怖い。
・トロール
トロールの強みは「振り直しで+1」です。しかし「6の目で+1したときに目が1になる」という仕様にすることで、むりやり「弱点」を持たせています。
・マッドラット
設計初期では「ターン開始時にHP6以下でダイス2個」でした。しかし弱すぎる。そこで「HP10以下でダイス2個」にしたところ、強いは強いけどなんか難しい。ここから「HP6以下でダイス3個」にすると良い感じに。そこでさらに思い切って「HP6以下でダイス5個」に。これがかなり良いプレッシャーを放つ敵になったので採用しました。
「強みを持たせたいなら、まず極端に調整してみる」のが良さそうな気がしますね。
・インプ
実は完成直前に急遽足しました。1~24マスの敵に「スライム」「トロール」以外の敵が欲しかったんですよね。MP0でマップ移動しないほうが良いことをプレイヤーに教える役割を持たせました。完成直前に足したので、コイツの存在で序盤が不当に難しくなっていないかちょっと心配です。「1~5の目しか出せない」特性足せば良かったかも。
・スケルトン
強い敵作ろう!と思って作った敵です。マジで強い…ゴースト同様、思い切ってMPを使うことをプレイヤーに求める敵ですね。
スケルトンやゴースト、トロール辺りはMPを使い切らせる/少なくすることで、サブコンセプトである「運に身を委ねて、喜びと絶望を味わう面白さを追求する」が発生するように狙いました。
そのほか、敵のほとんどは、
- 「常に6の目を出して攻撃していればいいわけではない」
- 「常に1の目を出させて防御していればいいわけではない」
となるように意識していました。
全体的な設計思想として、基本システムの面白さを崩さないように気を付けました。
ダメージを受ける→MPを使ってダイスをコントロールする、という基本ですね。
敵配置
同じ敵は連続で出ない。ただしエリートはその限りではない。1~75まではそのような仕組みになっています。
・1~25
スライム、トロール、インプの三体からランダム。振り直しのみで立ち回るため、このような構成です。基本的なゲームシステムを覚えてもらうのが狙いです。
・26~50
かしこいトリ、マッドラット、アーマーの三体からランダム。手強くなってきます。
・51~75
ゴースト、キラービー、スケルトンの三体からランダム。強敵揃いです。
・76~100
トロールとインプ以外全部ランダム。一部の敵はダイスが二個になります。トロールとインプが出現しないのは、ダイス二個のときのプログラミングの実装が手こずりそうだったのが原因です。この辺りを苦にしないプログラミング力を身に付けたいですね。
後半に行くほど強い敵が出てくる、という伝統的な配置です。あまり深く考えていないとも言う。HPに関しては、1~25の敵は攻撃二,三回で倒せるようにしています。そこを基準に敵を強くしていくように作りました。
スキルの設計
スキル設計において参考にしたのは『Dicey Dungeons』です。「反転」はまんま「へら」で、悔しいけど採用せざるを得なかった!基本的にはシステムの枠組みから考えました。ダイスの目、ダイスの数のどちらか、あるいは両方に影響を与えるものですね。MPコストに関しては効果の強さから自動的に決まるようなものでした。「追加」スキルがコスト2と3のあいだを行ったり来たりしていたくらいかな。それ以外はだいたい最初に決めた値のままです。
- 移動で頼りになる
- 戦闘で頼りになる(ダイスを増やす系のスキル
- 移動と戦闘、どっちでも頼りになる
結果として大別すると三種類に分かれることになりました。
ダイスを増やす系のスキルも移動で活用出来るようにしたかったのですが、それをやろうとするとさらに面白さへの探究が必要になって完成がどんどん延びてしまうと思ったのでやめました(言い訳)。
UIやテキストの設計
- いまどういう状態か分かる
- これからなにが起きるか分かる
を全体的に意識しました。
UI
UIデザインなんも分からん!となっていたのであまり語れません。意識して設計したのは、「振り直し」&「移動/攻撃」はこのゲームで一番使うアクションだからプレイヤーの右手側に配置した点でしょうか*5。それに合わせる形でプレイヤーアクションを全て下側にまとめました。
それとは逆にシステム的な要素を上側にまとめました。
各UI、改めて見るとかなりキツキツだなあという印象ですね。UIデザイン,画面サイズ,解像度に関する勉強を今後していきたいところ。
テキスト
各アイコンをマウスオーバーすることで、テキストが出るようにしました。UIの多くはやはり『Slay the Spire』の影響があります。テキストは誤解を招かない文章にすることを意識しました。例えば、マッドラットの特性である「窮鼠猫を噛む」は最初
- HP6以下のとき、ダイスを5個持つ
でしたが
- ターン開始時にHP6以下のとき、ダイスが5個になる
になりました。事実ベースで書いて、解釈違いを生まないように気を付けました。(とはいえ、少し脇が甘いところもちらほら……)
気付きを大事に
開発の途中から、「気付き」が少しテーマになっていました。プレイヤーが気付くことで有利になる。そういう体験を意識しました。
例えば、「分割」スキルなんかが良い例でしょうか。効果テキストだけを読むと一見してこのスキルが強くは見えません。しかし3以上の目が出たときに二回分割して振り直し、するとMP5消費でダイス二個追加です。「追加」スキルを二回使ってMP6消費でダイス二個追加です。「分割」で増やすほうがMPが1おトクですね。
他にも、「プラス」で6の目を選択すると1の目ダイスを一個追加する、なんかは隠し仕様みたいなものですね。こういうのもプレイヤーの探究心を大事にしました。
各種演出の設計
演出で最も優先したことは
- いまなにが起きたか分かる
でした。これらに付随して、気持ち良さを出したいならそう感じられるような演出に、不快感,危機感を出したいならそう感じられるように、と考えました。
少し面白かったのが、ダメージ値などはHPゲージから出るよりも、キャラクターから出たほうが分かりやすかったことです。『さいころクエスト』、『Dicey Dungeons』、『Slay the Spire』、参考にしたいずれのゲームもこういう表現方法を使っています。なぜこの方法が分かりやすいと感じるのか、まだちょっと良く分かっていません。ダメージを受けた実際の対象に注目してしまうのでしょうか。そしてHPゲージはあくまでその対象の状態を表すものなのか。
UIや演出、大きく抽象化すると「ゲーム中の情報」。
これを実装するときに意識すべきは
- いまどういう状態なのか分かる
- これからなにが起きるのか分かる
- いまなにが起きたのか分かる
なのかもしれません。そのうえでプレイヤーにどういう感情に変化させたいのかを考えて実装していくと良いのかも。
捨てたもの
制作過程で捨てたものを振り返ります。
買い物システム
まず買い物システムがありました。初期設計では敵を倒してお金を手に入れ、25,50,75マスの中間ポイントで買い物が出来るシステムでした。買い物内容は
- HP,MP全回復
- 最大HP,最大MP強化
- アクティブスキル(完成版でいうスキルのこと
- パッシブスキル
でした。しかしこのシステム、アクティブスキルの価値が高すぎました。アクティブをまず買って、それを活かすためにステータス強化。そういう流れにしかならず、テコ入れしようにも根本的なシステムからしてアクティブスキルの価値が高すぎるため、まとめきるのは難しいと判断しました。今の自分にこれをまとめて磨き上げる力は無いと早々に白旗を揚げ、パッシブスキルは全て削除し、スキルを三つから一つ選ぶ現在の形に修正しました。
買い物システムは多くのゲームでも実装されているシステムで、少し憧れがあります。また再挑戦したいところです。ただ、すごろくシステムでもそうだったように、僕はまだ買い物システムへの理解が浅い気がしています。
お金を得る手段、商品の用意、値段設定、買い物機会の配置、など軽く考えただけでも考慮すべき点が山ほど出て来ます。買い物を取り巻く環境を整備して流れを作るだけでも大変です。一部だけを見ても上手くいかず、引いてある程度俯瞰する必要がある。
また、買い物は
- 商品を眺めるワクワク感(未知との遭遇、先への期待感
- 限られた予算をやりくりする楽しさ(リソースマネジメント
- 貯蓄→散財の本能的な気持ち良さ(溜め,我慢からの解放
辺りが現在思っている代表的な面白さの軸かなあと考えていますが、これも多分まだまだ浅い……
世界観・お話
これは捨てたというより、諦めたものですね。ただ、構想自体は明確にあったので捨てた感覚です。世界観・お話は、簡単なものを入れる予定でした。しかし開発が進んで体力を消耗した結果、カットして完成を優先させました。またいつかやるから…多分。
以下妄想してたプロットです*6。
- 滅びゆく王国の王太子が主人公(プレイヤー)
- 破滅の未来を回避するべく建国以前の遙か昔から存在する塔の頂上を目指す
- 塔は「運命の塔」と呼ばれていて頂上には「運命の女神」がいるらしい
- 運命の女神に会えばなんでも願いを叶えてくれるらしいが誰も会ったことがない
- ──ここまでオープニング──
- 頂上で運命の女神に会って願いを言う
- しかし運命の女神は自分は調律者/バランサーに過ぎないと応える
- あらゆるものは運命が決まっており、王国は滅ぶ定めである
- プレイヤーは「運命を受け入れて諦める」か「女神を殺し世界の理を壊す」
- 女神を殺した場合、あらゆるものの運命は定まらなくなり世界が混沌と化す
- しかし塔を登る中であらゆる運命を克服してきた王太子(プレイヤー)は見事王国が滅ぶ未来を回避する
とまあ、ありきたりですがこんな感じの簡単なお話要素を入れようと妄想していました。
ゲーム中のMPはマジカルポイントではなくマインドポイントで、精神的な力を現しています*7。MPを消費してダイスをコントロールするのは運命を打ち破る力であり、ダメージを受けてMPが回復するのは困難に打ち克とうとする精神力に他なりません。女神はプレイヤーの運命を打ち破る力(MPとスキル)を脅威に感じ、バランサーとして世界からの排除を試みてきます。戦闘でもMPを減らすような行動をしてくる。
とまあそういったこともやろうとしていましたが、結局は完成を優先させました。
そのほかに捨てたもの
自動回復量
完成版ではプレイヤーステータス強化内容は、HPとMPです。開発途中でこれらに加え、一度自動回復量を入れたことがありました。最大HPの30%回復ではなく、自動回復量が固定されているようなものですね。初期値5で3ずつ上昇する仕組みでした。しかし、これは無意味に軸がブレるだけのように感じたので結局削除しました。
敵
- ダイスの目1で100ダメージの「目玉」
- 奇数のときダメージ二倍攻撃&偶数のときダメージ0攻撃の「奇数」
- 偶数のときダメージ二倍攻撃&偶数のときダメージ0攻撃の「偶数」
- 1ターン目にMPを消費すると1ダメージになる呪いをかけてくる「呪術師」
- 1ターン目にMPが回復しなくなる呪いをかけてくる「呪い」
以上は開発初期に実際に実装しましたが、面白くなかったので全部削除しました。
「呪術師」と「呪い」はのちに「ゴースト」を作るヒントになりました。
そのほか、構想だけしていて実際に実装しなかったのは
などがありました。ピエロはやるべきだったかもなあ…消費4の複製が活きたかも。
敵アニメーション
これもやりたいと思いつつ完成が遠のいてしまうので制作を諦めた要素です。『Undertale』と『逆転裁判』のアニメーション技術を参考にして作る予定でした。
こうやって結局出来なかった/やらなかったことを長々と書くのはどうなんだと思わないでもないですが、ここで書いて次作への薪とします。
完成させてみて思ったこと
レベルアップ
他に書くところが思い付かなかったので、レベルアップについてここに書きます。レベルアップはHP+3かMP+1を選ぶシステムです。よく考えれば、HPがダメージでMPに変換される仕組みなため、上昇値の大きいHPを選ぶのが最適解になっているフシがあります。一応、とはいえ、序盤はMPを上げないとトロールとインプが強い。MPが0のときにレベルアップして回復のために選択する。などがあるので、ギリギリ崩壊を免れたかなという気もします。ただやっぱ浅い!
マップの進み方
「可能な限り少ない目を出して1マスずつ敵を倒していく」わりとこれが最適解になっています。これも手を入れるか迷ったのですが、結局完成を優先させて手を付けませんでした。「そもそも1マスずつ進むのが運任せ」「何度も戦闘してると運が悪いときに崩れ出す」辺りでバランスが取れてることを祈りました。(ゲーム制作者が祈るな)
運要素の実装
今回、運要素を用いたわけですが、実装面に関してはRandom.Range()を使うだけでした。これ、正直あまり良くないですよね。今後もゲームを作っていくことを考えるなら、やはり確率を自在に操れるようになる必要があると思います。
全体的な反省点
全体的に大きな問題は気持ち良さが足りないこと。厳しめのバランスにしたので、常に苦しさを感じるようなゲームになってしまいました。とはいえ、ある程度意図どおりではありました。
苦しい状況でも運が良ければ一気に楽になることがあります。これは
「運に身を委ねて、喜びと絶望を味わう面白さを追求する」
の実現が出来ています。しかしその体験は運に左右されます。なんたる皮肉か。
ここをもっと狙って起伏を作れたら良かったなと思います。
とはいえ、全体的な設計は上手くいった気もしていて、
【ラスボス相手に「○以上の目が出たら勝ち、出なかったら負け」状況に至る】
を実際にいくつか観測しています。なので多少は狙いどおりの設計が出来たのかなーと思います。初めてゲームをちゃんと設計出来た気がします。そろそろダーマ神殿でゲームデザイナーに転職できそう。「★1:かけだしゲームデザイナー」みたいな。
次に向かう方角
次に作るゲームは真っ先に気持ち良さを設計したいと思います。そのために注目しているキーワードが、
- 必殺技
- 緊急回避
- 攻撃力の恒常的上昇
- 攻撃力の瞬発的上昇
- 弱点システム
- 特大ダメージ
辺りでしょうか。他にも気になるキーワードとして、
- 小目標
- 副作用
辺りがあります。
キーワードを頼りにまた歩き出します。どこに辿り着くかは知らないけど。
正直、そろそろ目的地を明確に定めたほうがいいのかもしれませんね。
(あれ?早速迷子になりそうだな……)
次はカードゲーム作りたいなーと思ってたんですがどうかなー。作れるかなー。
それじゃ、またどこかで。