がむしゃらメモ

がむしゃらのメモ的な扱いのブログです

『さよなら絵梨』読んだ思考メモ

さよなら絵梨 - 藤本タツキ | 少年ジャンプ+

 

二回読みました。

そこそこ納得いく解釈を得ました。

メモります。

 

‐‐ここ予防線‐‐

 ここで書かれていることは、すべて僕の主観です。

人には人の乳酸菌……じゃなくて解釈があるので、自分の解釈を大事にしつつ、他人の解釈に反発したり呑み込まれたりしないようにしましょう。

‐‐予防線終わり‐‐

 

初回

 わーおもしれーサクサク読めるー。うわー母親が実は。えーファンタジー!すげー!

最後のコマこれなの?wなにこれわかんねえwww

 

第一部おもろい第二部おもろい第三部なにこれ

だいたいこんな感じでした。

 

解釈いろいろありそうで、それゆえにツイッターとかでいっぱい話題になったらめんどくさいなあと思っていました。が、意外と話題になってない感じ──ここでいう“話題になっていない”とは、自分の観測範囲に流れてこないの意──だったのでありがたかったです。話題が○○一色のとき、自分が入り込めないと疎外感が強くて地味に効くスリップダメージが発生するんですよね。最近だとエルデンリングがそうだった(ミュートしても入り込んでくる話題の強さ)。

 

二回目

 二回目読むまでにいろいろ考え、二回目読み終わってそこそこ納得いく解釈を得たかなぁ…?って感じ。

どっから書こうか…

 

第一部第二部おもろいのは変わらんのよね。ちゃんと分かる(と感じた)から。

面白いと思って作った映画がクソ扱いされたので、死のうとする。

美少女に「めちゃくちゃ面白かった!でもクソ扱いされてたのムカつくから新作でブチ泣かそうぜ」って言われたので自殺やめて新作作り始める。

いろいろあったけど、ブチ泣かすことに成功。ハッピーエンド。

 

ここまではやっぱり分かりやすい。面白かったって言われて自殺をやめるのは『ルックバック』とかなり似てる(似せたんかなぁ)ので、分かりやすい。「実は母親が…」っていうのも「えー!じゃあここのシーンとかそういう解釈もできるじゃん!」みたいな読み直す楽しさにつながっていいよね。

 

やはり問題は第三部だよな。難問すぎて「分かんないよ先生……;;」って感じなんですが。

 

 まず、必要性。第三部、要るぅ?

もちろん作中で回答が用意されていて、それだと「ありきたりでつまらない」から。「ファンタジーをひとつまみ」したと。ただ僕の感覚では【実は母親があんまり良い母親じゃなかった】で「おー!」ってなったし意外性は充分に感じちゃった。たぶん、僕が漫画とかアニメ / 映画見てなさすぎて、軽いジャブがストレートになったパターン。

 

つぎ、虚構について。第三部の入りは、「で、こっから現実です」。これがまた、お厳しい。映画なりゲームなり小説なり、創作の娯楽を楽しむことに慣れ親しんだ人にとっては周知のとおり、虚構に浸る感覚ってとっても心地良いものなんだよな*1。なので、虚構に浸っているときに両肩をグイッと引き剥がされて「はい現実に戻りましょうね~」されるのってめちゃくちゃイヤだし、この手の表現は結構デリケートに扱う必要がある。これを慎重に成し遂げられずに炎上するコンテンツ、たまに出てくるよね*2

もう一つ、作中作→作中作という構造なうえに、編集で切り取っている箇所があることも明示されたので、「もうなんでもアリやん」になってついていけない。安易なメタネタはやめろと言われるゆえん。第三部の部分に関していくら考えても、最終的に「これ全部虚構なんじゃない?」で終われてしまう。特に最後のコマとか。…終われてしまうからイイってことなんかねえ。*3

 

必要性その2。年取って、奥さんと娘とお父さんみんな死んじゃって~…のくだり、要る?文化祭の映画は好評に終わった。でも、現実の優太は母親に続き、絵梨との別れを体験し、耐えきれなくなる。思い出の場所で死のう。新・絵梨と遭遇。これでも成立しそうな気がする。

まあでも、必要性がある部分も推測できる。漫画書いたことなんて一切無い、僕の浅~い分析によれば、

  • 新・絵梨と優太の“差”を強調できる
  • ずっと映画の編集を続けていた、のくだりがオチに必要
  • 作中作→作中作と続いたので、大きな断絶を作らないとちゃんと引っ張り出せない*4

辺りかなぁと。

 

自殺をやめた理由。ここ!これが分からんのよなあ。8割くらいは納得できるんだけど……「みんな先に死んでも、映像に残っていれば思い出せるから素敵」と言われて自殺をやめる。でもそれ、第二部後半で優太はその考えを持っていることが明らかになっているんだよな。父親や学校の女の子*5にもいろいろ言われる。しかも、そもそも映像取るのが好きなら、その特性に気付かないのはリアリティが無い*6。だから納得する理由として弱いように思えてしまう。記憶や肉体は消えていくけど、映像の記録はずっと残る──なんて主張はありきたりすぎてそれこそつまらない。優太と同じ立場の新・絵梨が言ったからこそ自殺をやめた……でどうにか納得してはいるけど。あと、「周りの死に絶望して自殺」なんてありきたりってのもあるが…

 

最後のコマ。まあこれは最初びっくりしすぎて吹っ飛んだけど、二回目読めばちゃんと書いてあった。

「好評だったけど、な~んか足りないんだよなぁ……」

「ファンタジーがひとつまみ足りないんじゃない?」

「せや!爆発やった!」

敗因は恋人の言うことを聞きすぎたことですね。でもこの爆発オチ、微妙なんだよな~……爆発オチを面白いと感じるのは分かるつもりだけど、漫画の爆発って映像作品のそれと比べると魅力が弱い!!!数段落ちてしまう!!

 

まとめると

  • 第一部と第二部でふつーに満足しちゃった
  • 【作中作→作中作】+編集の可能性で、もうなんでもアリやん!
  • 「現実に戻れ」的なの、やっぱきちぃ~!
  • 急に出てきて殺された奥さんと娘さん;;
  • ついでに殺されたお父さん;;
  • 自殺やめた理由がなんか弱くねぇか…?分かんないよう…
  • 爆発って漫画だと映像作品に比べて魅力薄い(映像作品的漫画に対してこの突っ込みは無粋の極みなんですけどね)

かな。うん。

 

一番好きなコマは「絵梨があなたに喋ってますよ」のコマ。

 

 

おわり

 

*1:この感覚をまったく理解できない人もちょくちょく居て、そういう人の中には創作全般への侮蔑や憎悪に走ったりする人もいる

*2:おぼろげながら浮かんできましたね……イブールという言葉が……

*3:プレイヤーに自発的に“終わらせさせる”『UNDERTALE』Gルートの評価がまた上がってしまった

*4:コマの構図変えればいけそう?

*5:この子が一番可愛いよな

*6:『ルックバック』でも序盤のシーンで、漫画の評価尺度が「絵の上手さ」しかない登場人物達にめちゃくちゃ違和感覚えてイマイチ入り込めなかった